妊娠 うつ(その10)
うつ病の治療には、主に「抗うつ薬」という種類のくすりが使用されます。
抗うつ薬は、うつ病で生じる脳内神経伝達物質のバランスの乱れを修正することによって、うつ病の症状を改善します。そのため、抗うつ薬を服用すると憂うつな気分や不安感などが改善されますが、それは決してくすりによって性格が変わったりするわけではありません。
うつ病のときは、脳の機能不全によってものの見方が極端に悪くなります。そのため、元気なときなら気にならないようなちょっとした失敗でも、「とんでもないことをしてしまった」、「自分はダメな人間だ」と考えてしまいます。さらに、「こんなに役立たずの自分はこの職場にいても、迷惑をかけるだけだ」と考え、退職などに突き進んでしまうことがあります。
この“退職”という決断は、うつ病によってものの見方が否定的になっているために生じているものであり、患者さんの本来の考え方ではありません。決断を焦らずにうつ病から回復し、本来のものの見方、考え方ができるようになってから、「仕事をどうするか?」などの、重大な決断を行うようにしましょう。
また、せっかく治療を始めても、否定的なものの見方に基づいて退職や離婚をしてしまい、その結果、環境が悪化してしまう場合があります。この様に否定的なものの見方によって引き起こされた環境が、新たなストレスや周りからのサポートが得られにくい状況を作り出し、治療に悪影響を及ぼしてしまうこともあります。
うつ病の治療が回復期まで進み、もとの生活とほぼ同じように生活を送れるようになれば、次にうつ病の再発予防を考えます。うつ病はきちんと治療を受ければ回復する病気ですが、一方でぶり返しやすい病気であるといわれています。
この時期は、症状が軽くなってきたと感じるため、患者さんの中には治療をやめたいと思う方もいます。しかし、くすりには、「状態をよくする」という働きに加えて、「よい状態を維持する」という働きもあります。個人差はありますが、症状がよくなっても、初めてうつ病になった患者さんではおよそ半年間はくすりの服用を続ける必要があります。
また、うつ病になったときのものの見方を知ることで、自分なりにものの見方を調整して、再発を予防することも大切です。
うつ病患者さんは「100点でなければ0点だ」とか「〜でなくてはならない」というように、ものの見方が極端になり、いくら「こころの休息が大切です」と担当の医師に言われても、「休むことは悪いことだ」、「休んでいる自分はダメな人間だ」と考えてしまいがちです。
しかし、例えば糖尿病の患者さんが、甘いものが好きだからと言って、甘いものを食べながら糖尿病のくすりを服用しても効果は期待できません。同じように、うつ病も過度のストレスがかかった状態のままでは、せっかく治療を始めても十分な効果は期待できません。
治療の効果がしっかりあらわれるようにするためにも、これまで1人で抱えてきた負担をいったんおろして十分なこころの休息をとることが大切なのです。
治療のポイントは、まず「支持的精神療法」を受け、「環境調整」を行うことが大切です。
うつ状態は放っておいてもよくなることはなく、その症状は次第に悪くなっていきます。そのため、少しでも早く、専門の医師に相談することが重要です。
病医院でのうつ病の治療は、「支持的精神療法」が中心になります。 また、「環境調整」を行うことが大切で、症状の軽いうちに治療を始めれば、3〜6か月くらいで、症状はずいぶんとよくなります。
通院は、最初のうちは1週間ごとで、その後は、症状により通院頻度が長くなるので、 担当の医師と症状の変化について話し、くすりの効果を確かめながら治療を進めていきます。
うつ病は、治療を始めたからといって、すぐによくなるわけではありません。よくなったり悪くなったりを繰り返しながら、徐々に改善していきますので、あせらず根気よく治療を進めることが大切です。
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