不安障害 克服(その18)
「人前で何かをすることによって、悪い評価をされるのではないか・・・」
「周囲から注目を浴びるようなことをして、恥ずかしい思いをしてしまうのではないか・・・」
例えば結婚式のスピーチを頼まれて、「ちょっと恥ずかしいな」と思うのは誰にでもあることですが、スピーチを頼まれた時から失敗して他人から馬鹿にされはしないかと考えプレッシャーを感じて苦しい日々を過ごしたり、マイクの前に立ったもののふるえが止まらず、声もうわずり、スピーチを続けられなくなってしまう。あるいは、友達の家に食事に招待されたものの、不適切な食事のマナーを指摘されるのではなどと気になって、顔が真っ赤にほてり、おいしい料理ものどを通らなくなってしまう。
まだ本人が心を開き、悩みを明かしてくれていない場合には、無理に医療機関へ連れて行くことは難しいでしょう。何の相談も対話もないのに、いきなり家族から「ちょっと悩んでいるみたいだから、お医者さんに診てもらったら」と言われれば、言った本人に悪気はなくとも、言われた方はひどく傷つき、悩みを深めてしまいます。
まず、患者さんの不安や恐怖に共感し、悩みを共有するところから始めましょう。
次に、相手の悩みが性格や生まれ持った性質の問題ではなく、脳内物質に関する機能異常による病気の可能性が高いと言われていることを教えてあげます。当サイト等を使い、人の不安感や興奮に作用する神経伝達物質(セロトニンやドーパミン等)の量のバランスが崩れて不安や恐怖を感じやすくなっていると考えられていることを説明し、専門医の治療により改善の望みがあることを理解させてあげてください。
たとえば、恐くて電話に出られない人に対し「こんなのは『慣れ』です。真っ先に受話器をとって慣れてください!」と無理を強いるのは逆効果です。病気に対する無理解はさらなる悪化を呼び込みかねません。恐怖感による回避行動は、決して「怠け」ではないからです。
SADに悩む患者さんがプレッシャーを感じずに社会生活を送れるように、家族であれば「話を聞いてあげる」「休日の行動を無理強いしない」、学校や会社の友人であれば、「朝礼時等に人前で話をさせない」「食事の同席を強要しない」等、患者さんが負担に感じる状況を作り出さないようにしてあげてください。
不安が生まれる状況にあえて飛び込んで、刺激に身を曝す「曝露療法<エクスポージャー>」を行います。不安症状を生む状況にあえて飛び込む治療に際しては、唐突に刺激の強い状況に身を投じるのではなく、段階的な目標に沿って、徐々に身を慣らしていき、不安症状を改善していきます。SADの場合は、認知療法と行動療法をグループで行う「集団認知行動療法(CBGT)」も一般的に行われます。森田療法(森田正馬氏が1920年ごろ創始)では、不安や恐怖は自然な感情であり、よりよく生きたいという欲望と表裏一体のものと理解します。したがって不安は無理に排除しようとせずに「あるがまま」におき、不安の裏にある向上発展欲を生かして建設的な生活を営むことを目指します。そうすることによって症状へのとらわれから脱することができるのです。森田療法は入院治療が基本ですが、外来指導も行われています。
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秋田緑ヶ丘病院
精神科/心療内科/内科/麻酔科(医師 五十嵐 三儼)
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御茶ノ水医院
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