うつと漢方(その2)
脳は、人が生きていく中で「歩く」、「走る」、「食べる」といった基本的な動作に関する命令をからだに伝えており、これによって人は日常生活を円滑に送っています。しかし、脳が命令を出すのはからだだけではありません。こころにも「意欲」、「食欲」、「記憶」などといった感情的および知的命令を伝えています。脳からからだやこころへの命令は、神経伝達物質やホルモンなどを仲介して行なわれます。この神経伝達物質の中で、脳からこころに元気を伝える物質が“セロトニン”と“ノルアドレナリン”です。これらは気分や意欲、食欲、記憶などを神経に伝達します。脳内の神経細胞から、セロトニンやノルアドレナリンが放出されると、図のような受け手である神経細胞の受容体に結合して、情報を伝達します。しかし、何らかの理由でこのセロトニンやノルアドレナリンが減ると、気持ちの活性化が伝えられずに憂うつ感などを引き起こしてうつ病になると考えられています
うつ病はこれまで説明してきたような生活環境などによるストレスだけが原因でなるわけではなく、からだの病気が原因となることもあります。うつ病になりやすい病気には以下のようなものがあります。脳の病気によるうつ病(脳腫瘍、脳血管障害、老人性痴呆、てんかん、パーキンソン病など)、糖尿病、甲状腺機能の亢進症または低下症、更年期障害、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの膠原病、がん、手術後、血液透析、インフルエンザ、肝炎などのウイルス感染症などがあります。
「自分もうつ病かも・・」と思った方がいらっしゃると思います。うつ病で何よりも大切なことは、うつ病を正しく理解して、早めに治療を受けることです。うつ病は治療を受ければ必ず治る病気なので不安になることはありません。
人のこころはいつも元気というわけではありません。仕事でのミス、失恋、家族関係などほんの些細な出来事で、落ち込んだり、傷ついたりしてこころが不安定な1日を過ごすこともあります。しかし、たいていの場合、人は数日もすると回復して、また元気に“頑張ろう”と思える力をもっています。ところが時に、いつまでも気持ちが沈んだままで復活しないことがあります。このような状態を“うつ状態”といい、これが2週間以上も続くような場合、これからお話するうつ病に関わりが出てきます。人のこころは晴れたり、曇ったりを繰り返しながら日々の生活を送っています。
うつ病の大きな特徴は2つあります。感情面の「憂うつ感」と意欲面の「興味・関心の低下」です。風邪を引いたら、熱が出て、頭が痛くなり、盲腸になったらお腹が痛くなります。人のからだは病気になると何らかの症状が現れてきます。うつ病でもこれと同じようにさまざまな症状が現れるのです。ただし、うつ病が他の病気と違うところは、こころとからだの両方に症状が出ることです。「憂うつだ」、「悲しい」、「何の希望もない」、「落ち込んでいる」というような感情です。このような症状が午前中にひどく、午後から夕方にかけて改善してくるという“日内変動”があるのもうつ病の特徴の1つです。今まで好きだったことにも打ち込めなくなる、新聞を読む、テレビなどを見る気がしなくなる、仕事への意欲が低下する、何をするにもおっくうになる・・・など。軽いうつ病の場合は、このようなこころの症状が出ても、なんとか仕事などをこなしていけるため、うつ病の発見や受診を遅らせてしまいます。その他のこころの症状が現れることもあります。物事の判断がにぶくなる、自分に自信がなくなる、自分を責める、ささいなことから不安に陥りやすい・・・など。
うつ病は、単なるこころの問題(気持ちの持ちよう)として考えられがちですが、症状はからだにも現れてきます。からだの症状にはさまざまなものがあります。以下のような症状が2週間以上もずっと続いているのに、「理由が分からない…」、「病院に行っても治らない…」、という人はうつ病を疑ってみてください。
うつ病はこころとからだを活性化するセロトニンやノルアドレナリンといった脳内神経伝達物質の減少によって引き起こされると考えられています。
うつ病患者さんの場合は普通の人に比較して、神経伝達物質の量が少なくなっています。そのため、うつ病の治療ではくすりによって、神経伝達物質がもとの神経細胞に再び取り込まれるのを阻害して、神経伝達物質の量を正常に近い状態に戻します。
従来の抗うつ薬神経終末のセロトニンやノルアドレナリンを増やすことを目的として開発されたくすりですが、セロトニンやノルアドレナリン以外にも作用するため、くすりの副作用が比較的現れやすいといわれています。主な副作用は、口渇、便秘、排尿困難、眠気などです。
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